一同、美味しいほたてを食べ満足した後は、同じく綾里で採れるわかめの取材に向かう。国内漁穫量がトップクラスのほたてだけでなく、岩手県のわかめの生産量は日本一だと聞いた。この季節、収穫期を外れているが、日本一と聞いたら話だけでもぜひ、聞かせてもらおう。【岩手うんめぇ〜団】は食財を探求しに来たのであるから!話をしてくれたのは、わかめの生産者亘理(わたり)さんと泉さん。この道のベテラン二人だ。
挨拶を交わした杉浦団長、まず綾里のわかめを食べたことがあるかと聞かれた。三陸産のわかめはあるが綾里産100%のわかめは誰も食べたことがなかった。杉浦団長たちの返事を聞くと「あら!?食べたことないの?とにかくこの日本一のわかめを食べさせてやりたいよ」と残念そうな泉さん。この綾里で採れるわかめの味覚に絶対の自信があるようだ。
わかめは年中スーパーなどで売っているが実はシーズンがあり、寒い季節の1〜4月がわかめの美味しい季節なのだ。「冬はね、寒くて寒くて、わかめを触る手もカチンコチンだよ」と亘理さん。「年中売ってるからわかめにシーズンがあるなんて知らなかったな」と杉浦団長。ここにある仕掛けは10〜11月に準備をして12月を過ぎた頃に海に仕掛けるのだ。そうすると約1ヵ月で40cm程の大きさに成長する。1月に入ると、わかめの品質を高めるために不要な箇所、密集している部分を間引く。そうすることで残ったわかめに栄養が行き渡り、茎が真っ直ぐ伸びてきれいになるのだ。
「この間引いたわかめを早採りわかめっていうんだけど、これが本当にウマイ!」と亘理さん。「え?間引いたわかめも食べられるんですか?」と杉浦団長。「そうなの!!適度に柔らかくて肉厚でウマイんだから!でも、日持ちが悪いし、流通もしてないんだよね」と残念そうな泉さん。「関東でも味噌汁とかにわかめ入ってるでしょ?」と亘理さん。「入れています、わかめの味噌汁大好き!」と笠原副団長、菰田副団長がうなずく。「本物は、綾里のわかめ!ドロっとしてないシャキシャキだし、わかめの味が味噌よりも濃いし、浄化作用が強くて味噌と混ざらないんだから!」と泉さん。とにかく綾里のわかめを食べさせたいと思わず口調にも力が入る。「でも流通してないなら買えないのかー、幻のわかめだー」と菰田副団長。「えー、そんな言うなら、食べてみたいなぁ」と杉浦団長も悔しがる幻のわかめだった。
わかめに限った話ではないが、三陸の海は津波が直撃し苦労も多かった。海を仕事場とする漁師にとっては、大きなダメージだ。大切なものを何もかも失ってしまい、復旧にはとても時間が掛かる。多くの人の協力を受け、海を元に戻すために、山からきれいにした。その後、必要な船や機械を一から購入し、なんとか今の状況まで復帰できたのだそうだ。しかし震災前と比べて生産者の数は3分の1にまで減少してしまい、後継者もなかなかいなくて苦しいのが現状だ。「もっと安定して、収穫できれば若い人も入ってくるんだろうけど、自然相手だとなかなか難しいね」と亘理さん。
わかめには知られざる苦労がある。「自分たちが必死で作ったわかめを全国の人にちゃんと食べてもらいたい!」と泉さん。しかし、他の農林業や畜産業のようには生産者の名前をアピールできていない。今後、自分たちでブランド化を図り、生産者の名前も表記し、出荷先まで自分たちで売り込みができるようにしていく工夫をしていきたいと夢を語る。
わかめと三陸の海に誇りがある亘理さん。今回、生のわかめは食べられないなら、と塩蔵わかめの酢物を用意してくれた。ついに味を体験できる!とワクワクする3人。まずは杉浦団長が一口。「おお!?塩蔵でもシャキシャキ!」。続いて菰田副団長。「わかめって柔らかいイメージがあるけど違ったわ。間違ってた!」と噛みしめる。「あぁ、言ってる意味が分かった。これ、丼1杯いけちゃうなぁ」と笠原副団長。「これ食べたら、もう他のわかめなんて食えなくなるからね」皆が美味しそうに食べる顔を見守りながら、亘理さんはしてやったりの表情だ。「こういうのを子供に食べさせてあげたい」と菰田副団長。「本当のわかめだもんね」と杉浦団長。「これ店に欲しい」と笠原副団長。「今準備してるからもうちょっと待ってね。もうわかめは、脇役だなんて言わせないよ!」と泉さんは言葉に力を込めた。