生産者が語る、いわての食財。
いわての自慢のふたつの実り。「江刺のリンゴ、花巻の雑穀、個性豊かな、いわての実り。」
「宮沢賢治のふるさと岩手は、雑穀のふるさとでもありました。」花巻農業協同組合 畠山英剛さん
花巻市の郊外の山あいに、その雑穀畑はありました。県南の稲作地帯の開けた風景とはちがい山の裾野に小さな田や畑が開かれています。案内されたのは「だるまひえ」の畑。一見すると、普通の水田のよう。近づいてみると穂のかたちが違います。
「国産の『ひえ』の90%以上が、岩手県産です。主な品種はうるち性の『だるまひえ』ともち性の『ねばりっこ』。昔は、寒さの厳しい山間でも育てられる米の代用食として育てられていた雑穀類。いまでは注目の健康食として知られています。
ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富なので、お米と一緒に炊き込むと、お米の栄養を補ってくれるんです。十穀米、十六穀米は、みなさんおなじみですよね。ひえは、このあたりではサラダのトッピングにしたりします。
圧力鍋で炊いて、冷凍しておくんです。冷凍用ビニールパックに薄く延ばして。菜箸でおさえて、カレールーみたいに折りやすい溝をつけて…。
汁物にいれるとトロミづけになるのでスープに入れたり、あんかけにトッピングしたり。食感のアクセントになるんですね。そして花巻の新名物、ひえカレー。これが絶品です。いま、花巻市内十数店舗の飲食店がメニューに載せ、名物にしようと取り組んでいます。」
つぎに伺ったのが『あわ』を育てる農家。もう刈取りは済んでいて、おばあさんが天日干しの準備中です。納屋の軒先には『あわ』の穂が束ねられ干してあります。
「あわは和菓子で、よく使われますね。あわ餅って、もち米とはまたちがった食感と風味です。昔はご飯と一緒に炊いて、金シャリって呼んでましたね。お米だけのご飯は銀シャリっていうでしょ。」
最後は、タカキビ畑。背の高いタカキビは赤とんぼにとっては格好のエアポート。このタカキビ、別名コウリャン(高粱)。中国の作家で漠言の「紅い高粱」という小説は、映画化もされました。
「タカキビは、つぶが大きいので、ハンバーグにするとひき肉のような食感です。お肉3割タカキビ7割で、ヘルシーなハンバーグになります。ぜひお試しを。」 健康志向の飲食店が増え、雑穀を食べる機会も増えてきています。でも、その魅力はまだまだ知られていないようです。
「これから進めていきたいのが、ハトムギをつかった化粧水の開発です。ハトムギは、ヨクイニンという漢方薬でもあり、イボや肌荒れに良いとされています。また、販路の開発も課題です。近所のお米屋さんとか、みなさんの身近なところで売っていただける小売店を増やしたい。
それと関西圏。震災前には扱ってくれていたところが、震災後は引き合いがなくなりました。健康と食への関心が高い関西の人たちにも、日本一の岩手の雑穀を、ぜひ、食べていただきたいですね。」