純情産地探訪記

食味ランキングで最高位の「特A」評価を平成18年度まで12回獲得している岩手県南産「ひとめぼれ」。全国的に認められたおいしい米は、どんな環境で、どんな人が作っているのだろうか。産地を訪ねてみた。


澄んだ空気と、清らかな水が
豊かな実りをもたらしていた。

いわて純情米「ひとめぼれ」の産地、岩手県南部。後ろに見えるのはカントリーエレベーター

 岩手県南部に位置する胆沢地域。ここは、国内最大級の胆沢扇状地を擁する稲作地帯であり、「いわて純情米」の代表品種・ひとめぼれの主要産地である。収穫期を迎えた9月中旬、この地を訪れると、黄金色に輝くじゅうたんのような田んぼが、一面に広がっていた。


 たわわに実った稲は重そうに頭を垂れ、風が吹くと穂を揺らす。そのたびに「ざわざわ」という音が、心地よく耳に響く。空気が澄んでいることは、そこに立っているだけでもよく分かる。


 この一帯を潤し、豊穣の地にしているのは、焼石連峰を源流とする胆沢川。この川は、水質の基準となるBOD(生物化学的酸素要求量)調査で東北1位(平成15年度調査)の「きれいな川」と判定された、正真正銘の清流である。ホタルやカジカなど希少な生物がいのちを育む清らかな水が、豊かな実りをもたらしていた。


頑固一徹にこだわり抜く。
それが米づくりのポリシー。

石川千早さん。農家の二男であり、サラリーマンを経てUターンした石川さんは、米作りに取り組んで26年ほどになるという

 食味ランキングでの特A評価は、この地域の米づくりへの情熱と生産技術の高さを物語っている。その秘けつを探るため、専業農家の石川千早さんのもとへ向かう。


 石川さんは、関西・近畿圏では最も名前が知られている岩手の生産者ではないだろうか。大阪ABCラジオの人気番組「アベロクのどんまいサンデー」が、JA岩手ふるさとに電話をかけたことから始まった、リスナーによる米作り体験ツアー。現在は「ほっとハート!にちよう柴田塾」という番組に引き継がれ、今年で10年目になるが、この体験圃場が石川さん所有の田んぼ。ツアーの模様は電波で届けられ、関西地区での岩手の米の認知度アップにも貢献している。また、石川さんは仲間5人とともに、地域内で手の足りない農家の作業を請け負う組合を10数年前に立ち上げるなど、早くから集落営農に取り組んでいる。

ラジオ番組の企画では、石川さん所有の田圃で中継が行われている。田植えや稲刈りの模様は関西・近畿圏に紹介され、岩手の米のPRにも役立っている


 弾けるような笑顔で饒舌に語る石川さんだが、米作りに関しては「頑固一徹」がポリシー。「消費者が望む米をつくるのが、我々の使命だからね」。常に、食べる人のことを第一に考えているのだ。


いくつもの条件が揃って
はじめておいしい米ができる。

サイバー案山子、ライブカメラで24時間画像をインターネットで配信し、消費者に「安全・安心」を訴える

 この地方は前沢牛や奥州牛をはじめブランド牛の産地でもあり、良質な堆きゅう肥を使用することで減化学肥料栽培につなげている。また、独自の基準を設けて農薬や化学肥料の使用を制限している。畦を歩くと、イナゴが元気に飛び跳ね、カエルがぴょんぴょん歩き回る。これは、農薬を抑えた米づくりの証しなのだろう。石川さんの田んぼにはライブカメラ(動画配信システム)が設置されているが、その画像はJA岩手ふるさとのホームページから配信されている。これも、信頼できる米作りをしているからこそ、できることである。


 石川さんは、「実りの時期を迎えた田んぼもいいけれど、花もいいよ。咲いているのはせいぜい2〜3時間だけど、待ちこがれていたものに出会えたという気持ちになる。6月ごろの分けつの時期も、好きだなあ。ひと雨ごとに緑が濃くなるんだ」と、うれしそうに話す。作り手の深い愛情と熱意に引き込まれ、時間を忘れて話に耳を傾けていたが、風がひんやりしてきたのに気づき辺りを見ると、もう日が落ちかかっていた。一日の気温の差が大きいことも、稔りを良くする要因らしいが、確かに日較差は大きい。

石川さんは食育教室で地元、南都田小学校5年生に米作りの指導もしている。


 おいしい米は、どこでも、だれにでも作れるものではない。いくつもの条件を満たす環境と、米作りに情熱を注ぐ生産者に出会い、そう確信した。

関連ページ
JA岩手ふるさとホームページ
全農いわて いわて純情米ホームページ
全農いわて 大阪との交流事業のページ


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